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塞下曲六首


塞下曲六首 李白26-31


塞上曲 六首 李白

塞下曲六首 其一(五月)  ・塞下曲六首 其二(天兵)  
塞下曲六首 其三(駿馬)  ・塞下曲六首 其四(白馬)  
塞下曲六首 其五(塞虜)  ・塞下曲六首 其六(烽火)  
塞上曲(大漢)

邊塞詩 戦争に行っていない李白が戦場や、外敵から守るための塞、などを題材にして歌う。漢文委員会ではこれを妻の立場で歌う、「春思う」、や「秋思う」等も邊塞のグル−プとしてとらえていく。

 塞下曲六首 其一(五月)


李白26 塞下曲六首 其一



(1)塞下曲    李白
五月天山雪,無花祗有寒。
笛中聞折柳,春色未曾看。
曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。
願將腰下劍,直爲斬樓蘭。


旧暦の五月(=夏)に、天山では雪が降る。(春や夏の訪れを示す)花はなく、ただ、寒さだけがある。
笛の調べで、折楊柳の曲を聞いた(が),(実際には、柳の芽吹く)春の気配など、まだまったく見たことがない
朝(からの戦闘で)は、鐘と太鼓に従って戦い。夜には、立派なくらを抱いて眠る。
できることならば、腰に下げた剣で,ただちに樓蘭を斬ってしまいたいものだ。

辺疆の砦附近の風物や戦争のありさま、出征兵士の心情を詠ったものの詩題。漢の李延年の『歌』「北方有佳人,絶世而獨立。一顧傾人城,再顧傾人國。寧不知傾城與傾國,佳人難再得。」で有名な、漢代の宮中音楽家は『出塞』『入塞』の曲を作った。

五月天山雪
旧暦の五月(=夏)に、天山では雪が降る。
 ・五月:陰暦五月で、夏になる。 ・天山:〔てんざん〕新疆にある祁連山〔きれんざん〕(チーリェンシャン)。天山一帯。当時の中国人の世界観では、最西端になる。天山山脈のこと。新疆ウイグル(維吾爾)自治区中央部タリム盆地の北を東西に走る大山系で、パミール高原の北部に至る。雪山。ここでは「異民族との戦闘の前線」の意として、使われている。

無花祗有寒
(春や夏の訪れを示す)花はなく、ただ、寒さだけがある。
 ・無花:花は(咲いてい)ない。 ・祗有:〔しいう〕ただ…だけがある。「無花祗有寒」の句中で前出「無」との揃いで用いられる表現。「無花祗有寒」。≒只有。 ・寒:寒さ。

笛中聞折柳
笛の調べで、折楊柳の曲を聞いた(が)。
 ・笛中:胡笳の調べで。葦笛の音に。 ・聞:聞こえる。 ・折柳:折楊柳の曲。

春色未曾看
(実際には、柳の芽吹く)春の気配など、まだまったく見たことがない。
 ・春色:春の気配。春の景色。 ・未曾:まだ…でない。…いままでに、…したことがない。 ・看:見る。

曉戰隨金鼓
朝(からの戦闘で)は、鐘と太鼓に従って戦い。
 ・曉:明け方。朝。あかつき。 ・戰:戦う。 ・隨:…にしたがって。 ・金鼓:(軍中で用いる)鉦(かね)と太鼓。進むのに太鼓を用い、留まるのに鉦(かね)を用いたことによる。

宵眠抱玉鞍
夜には、立派なくらを抱いて眠る。
 ・宵:夜。よい。 ・眠:眠る。 ・抱:だく。いだく。 ・玉鞍:〔ぎょくあん〕立派なくら。玉で作ったくら。

願將腰下劍
できることならば、腰に下げた剣で。
 ・願:願わくは。 ・將:…を持って。・腰下:腰に下げた。 ・劍:つるぎ。元来は、諸刃(もろは)の刺突用武器を指す。


直爲斬樓蘭
ただちに樓蘭を斬ってしまいたいものだ。
 ・直:ただちに。 ・爲:〔ゐ〕…のために。…に対して。…に向かって。目的や原因を表す介詞。また、〔ゐ〕なす。する。致す。動詞。ここは平仄からいえば、前者の意の介詞として使われるべきところ。 ・斬:傅介子等が楼蘭王を斬り殺した故実のように、征伐をする。 前漢の昭帝の頃、傅介子等が樓蘭王を殺したことを指す。 ・樓蘭:〔ろうらん〕漢代、西域にあった国。都市名。天山南路のロブノール湖(羅布泊)の畔にあった漢代に栄えた国(都市)。ローラン。原名クロライナ。現・新疆ウイグル(維吾爾)自治区東南部にあった幻の都市。天山の東南で、新疆ウイグル自治区中央部のタリム盆地東端、善〔善+おおざと〕県東南ロブノール湖(羅布泊)の北方にあった。そこに住む人種は白人の系統でモンゴリアンではなく、漢民族との抗争の歴史があった。四世紀にロブノール湖(羅布泊)の移動により衰え、七世紀初頭には廃墟と化した。現在は、楼蘭古城(址)が砂漠の中に土煉瓦の城壁、住居址などを遺しているだけになっている。 ・終:どうしても。いつまでも。とうとう。しまいに。ついには。 ・不還:還(かえ)らない。戻らない。かえってこない。


塞下曲六首   李白 (Li Bai)
其一

五月天山雪,無花祗有寒。
笛中聞折柳,春色未曾看。
曉戰隨金鼓,宵眠抱玉鞍。
願將腰下劍,直爲斬樓蘭。


 塞下曲       
五月  天山の雪,
花 無くして  祗(た)だ 寒のみ有り。
笛中  折柳(せつりう)を 聞くも,
春色  未だ 曾(かつ)て 看ず。
曉(あかつき)に戰ふに  金鼓に 隨(したが)ひ,
宵(よひ)に眠るに  玉鞍を 抱(いだ)く。
願はくは  腰下(えうか)の劍を 將(も)って,
直ちに 爲(ため)に  樓蘭(ろうらん)を斬らん。




李白27 塞下曲六首 其二


其二
天兵下北荒,胡馬欲南飲。
戈從百戰,直為銜恩甚。
握雪海上餐,拂沙隴頭寢。
何當破月氏,然後方高枕。

天子の軍隊は北方の荒れた土地に出動し、えびすの軍馬は南に水を飲みに来ようとする。(衝突する)
戈を構えて百回の戦闘に参加するのはただ、天子の恩を深く心に刻んでいるからだ。
湖のほとりでは雪を握って食べ、砂漠のあたりでは、砂をかぶって寝る。
いつになったら、月氏を破り,そうしてはじめて枕を高くして眠ることができる。。

天兵下北荒
天子の軍隊は北方の荒れた土地に出動し
天兵 天子が指揮するところの軍隊。  北荒 北方の荒れ地。

胡馬欲南飲
えびすの軍馬は南に水を飲みに来ようとする。(衝突する)
北方の異民族は遊牧であり、古来、南の地に進出を図っていた。それを阻止するため、国中から、北の守りについた。


戈從百戰
戈を構えて百回の戦闘に参加するのは
戈 長い柄の武器を構えることをいう。戈はもろ刃の剣に長い柄をつけた武器。

直為銜恩甚
ただ、天子の恩を深く心に刻んでいるからだ。
銜恩 恩を心に深く止める。

握雪海上餐
湖のほとりでは雪を握って食べ、

拂沙隴頭寢
砂漠のあたりでは、砂をかぶって寝る。
隴頭 甘粛省のあるゴビ砂漠のほとりあたり。

何當破月氏
いつになったら、月氏を破り,
月氏 昔の西域の国名。もtもと、敦煌、祁連の間に住み、現在の甘粛省中部と西域と青海省の東域を領土にしていた。漢の時代に匈奴に敗れ、大月と小月に分かれ、大月は、インドカンジス川流域、小月は甘粛省に分散して残った。

然後方高枕
そうしてはじめて枕を高くして眠ることができる。


天兵下北荒,胡馬欲南飲。戈從百戰,直為銜恩甚。
握雪海上餐,拂沙隴頭寢。何當破月氏,然後方高枕。

天兵 北荒を下り,胡馬 南に飲わんと欲す。
戈をたえて百戰に從う,直だ恩を銜ふくむことの甚はなはだしきが為なり。
雪を握って海上に餐し,沙を拂って隴頭に寢ぬ。
いつかに當たって月氏を破り,然しかる後 方まさに枕を高うせん。





李白28 塞下曲六首 其三

(3)28
駿馬似風飆,鳴鞭出渭橋。彎弓辭漢月,插羽破天驕。
陣解星芒盡,營空海霧消。功成畫麟閣,獨有霍嫖姚。








李白29 塞下曲六首 其四

(4)29
白馬黄金塞,雲砂繞夢思。那堪愁苦節,遠憶邊城兒。
螢飛秋窗滿,月度霜閨遲。摧殘梧桐葉,蕭颯沙棠枝。
無時獨不見,流?空自知。


白馬のいる?金の塞,雲と砂の大地を夢を繞る。
堪えがたきは愁苦の季節,はるか遠く国境の兒おのこを憶う。
螢は秋の窓辺に飛び,月は霜ふる閨ねやにを遲くにわたる。
色あせ敗れた梧桐あおぎりの葉,蕭とした颯に沙棠やましなの枝。
いつの時も面影の見えないまま,流れる涙はむなしさを知る。

白馬 黄金の塞,雲砂に夢思を繞らす。
那ぞ堪えん 愁苦の節,遠く邊城の兒を憶う。
螢飛 秋窓に滿つ,月度る 霜閨に遲し。
摧殘す 梧桐の葉,蕭颯たり 沙棠の枝。
無時に獨り見ず,流? 空しく自ら知る。






李白30 塞下曲六首 其五

塞虜乘秋下,天兵出漢家。
將軍分虎竹,戰士臥龍沙。
邊月隨弓影,胡霜拂劍花。
玉關殊未入,少婦莫長嗟。

塞の虜は秋になると下っていき
天子の兵は長安を出発する
將軍は敵陣を突破して
戰士は龍沙砂漠に横たわる
塞を照らす月は弓影をうつす
北方の霜は劒の打ち払う火花さえ消す
ここ玉門関はまだまだ外敵に侵入されない
故郷の若い妻嘆くことなぞないぞ

塞虜(さいりょ) 秋(あき)に乗(じょう)じて下(くだ)り
天兵(てんぺい) 漢家(かんか)を出(い)ず
将軍(しょうぐん) 虎竹(こちく)を分(わか)ち
戦士(せんし) 竜沙(りゅうさ)に臥(ふ)す
辺月(へんげつ) 弓影(きゅうえい)に随(したが)い
胡霜(こそう) 剣花(けんか)を払(はら)う
玉関(ぎょくかん) 殊(こと)にいまだ入(い)らず
少婦(しょうふ) 長嗟(ちょうさ)することなかれ







李白31 塞下曲六首 其六
烽火動沙漠,連照甘泉雲。漢皇按劍起,還召李將軍。
兵氣天上合,鼓聲隴底聞。行負勇氣,一戰淨妖氛。

烽火動沙漠,連照甘泉雲。漢皇按劍起,還召李將軍。
兵氣天上合,鼓聲隴底聞。行負勇氣,一戰淨妖氛。






李白31
塞上曲  李白

大漢無中策。 匈奴犯渭橋。 五原秋草香B
胡馬一何驕。 命將征西極。 行陰山側。
燕支落漢家。 婦女無華色。 轉戰渡?河。
休兵樂事多。 蕭條清萬里。 瀚海寂無波。