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李白邊塞詩 春思 秋思


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邊塞詩の詩人

邊塞詩の詩人

李白邊塞詩 春思 秋思


 李白20 春思


春を迎えての思い。異郷に旅立っている男性を思う歌。留守を守る女性の立場で詠われた作品である。本来、邊塞詩に分類されるものではないが、王昌齢などと同じように辺地に行かないで想像して歌っているのでこちらに分類した。この系統の詩は、六朝以来伝統的に詠われた形式で、李白はその完成者といわれている

春思 李白 

燕草如碧絲,秦桑低克}。
當君懷歸日,是妾斷腸時。
春風不相識,何事入羅幃。

(男性が出かけている)北国である燕国の草は、緑色の糸のように(生えて春を迎えたことでしょう。
(ここ)長安地方のクワは、(もう、しっかりと繁り)緑色の枝を(重そうに)垂らしている。
あなた(男性)が戻ってこられようと思う日は       
(それは)わたしが、腸(はらわた)の断ち切られるばかりのつらい思いをする時である。
春風は、顔見知りの愛(いと)しいあの男(おかた)ではない(のに)。
どうしたことか、(わたしの)寝床の薄絹のとばり内ら側に入ってくるではないか。
 
 ○韻 絲、枝、時、幃。
                      
燕草は 碧絲の如く,
秦桑は 克}を 低たる。
君の 歸るを懷おもう日に 當るは,
是これ 妾しょうが  斷腸の時。
春風  相ひ識(し)らず,
何事ぞ 羅幃らいに入る。




燕草如碧絲:
(男性が出かけている)北国である燕国の草は、緑色の糸のように(生えて春を迎えたことでしょう。 ・燕草:北国である燕国の草。 ・燕:〔えん〕北国の意で使われている。現・河北省北部。 ・如:…のようである。 ・碧絲:緑色の糸。 ・碧:みどり。あお。後出「香vとの異同は、どちらも、みどり。「碧」〔へき〕は、碧玉のような青緑色。青い石の色。「香v〔りょく〕は、みどり色の絹。

秦桑低克}:
(ここ)長安地方の桑は、(もう、しっかりと繁り)緑色の枝を(重そうに)垂らしている。
 季節も変わり、月日も流れた…、という時間経過を表している。 ・秦桑:(ここ)長安地方のクワ。 ・秦:〔しん〕、女性のいる場所の長安を指している。 ・低:低くたれる。 ・克}:緑色の枝。

當君懷歸日:
あなた(男性)が戻ってこられようと思う日は。 ・當:…あたる。 ・君:(いとしい)あなた。男性側のこと。 ・懷歸日:戻ってこようと思う日。(彼女に告げていた)帰郷の予定日。

是妾斷腸時:
(それは)わたしが、腸(はらわた)の断ち切られるばかりのつらい思いをする時である。
 *この聯は、いつになっても帰ってこない男性を、ひたすら待つ身のやるせなさを謂う。 ・是:(それは)…である。 ・妾:〔しょう〕わたし。女性の謙遜を表す自称。 ・斷腸:腸(はらわた)が断ち切られるほどのつらさや悲しさ。

春風不相識:
春風は、顔見知りの愛(いと)しいあの男(おかた)ではない(のに)。 ・不相識:顔見知りの人ではない。知り合いの人ではない。

何事入羅幃:
どうしたことか、(わたしの)寝床の薄絹のとばり内ら側に入ってくるではないか。
 *わたし(=女性)の切なく淋しい胸の内を理解して、春風は慰めてくれているのであろうか。 ・何事:どうしたことか。 ・羅幃〔らゐ〕薄絹のとばり。


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 秋を迎えての思い。異郷に旅立っている男性を思う歌。留守を守る女性の立場で詠われた作品である。

秋思

燕支黄葉落、妾望白登台。
海上碧雲断、単于秋色來。
胡兵沙塞合、漢使玉関囘。
征客無帰日、空悲尅雀煤B

秋の思い。
燕支の山で黄葉もみじが落ちるころ、妾わたしは白登台を望みます。
湖上のほとり、真っ青な空の雲も、遠く流れて消え、単于の住むところ、北の国には、秋の気配が満ちてきた。
胡の兵たちは、砂漠の塞に集結したという、漢の国の使者は、玉門関から帰ってきた。
出征されたお方は帰ってくることないのでしょうか、残された者は、空しく悲しい思い、あたかも香草が霜枯れするように。

 玉門関以西に出征したものの帰還はまれだった。本来、3年間が府兵制度の兵役であるが、なし崩しで守られなかったのだ。
多くの詩人に詠われている邊塞詩、あるいは、この玉門関そのもの名で、あるいは、「涼州詞」と題し詠われている。王翰、王昌齢、王之渙、が詠っている。李白よりすこし先輩である。
 六朝時代より伝統的な戦場に行かないで戦場のことを詩に詠う形式も邊塞詩の特徴である。たいていは、これらには音楽を伴って、酒場などで歌われた。李白の詩は、酒代であったのだろうか。


 ○韻 台、來、囘、摧。

燕支に 黄葉もみじ落ち、妾は望む 白登台。
海上 碧雲 断え、単于 秋色 来る。
胡兵は 沙塞に合わせ、漢使は 玉関より囘る。
征客は 帰える日無く、空しく悲しむ 尅垂フ摧くだかれるを。



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漢文委員会  紀 頌之